誰もが乗れるタクシーへ。UDタクシー(ユニバーサルデザインタクシー)とは?普及の現状もご紹介
2026/07/31

タクシーは、電車やバスと違って時刻表もルートも決まっていない分、「誰でも、いつでも、どこへでも」利用できる交通手段だといわれます。ただし実際には、車椅子を使っている方や、杖をついて歩く高齢の方、大きなお腹の妊婦さん、ベビーカー連れの方にとって、一般的なタクシー車両への乗り降りが簡単ではない場面もあります。
そうした状況を変えるために生まれたのが「UDタクシー(ユニバーサルデザインタクシー)」です。今回は、UDタクシーとはどのような車両なのか、そして国内での普及がどこまで進んでいるのかを、公的な資料をもとにご紹介します。
UDタクシーとは?

UDタクシーとは、車椅子のまま乗車できるスロープや広い車内スペースを備えた車両のことです。「福祉タクシー」という言葉を聞くと、事前予約が必要な特別な車両というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかしUDタクシーは、車椅子を利用される方だけのための車両ではなく、特別な予約をしなくても、通常の流し営業や配車依頼の中で利用できるように設計されている点が大きな特徴です。
対象となるのは、車椅子を利用する方だけではありません。
1)足腰が弱く、乗り降りに手すりやスロープが必要な高齢の方。杖をついている方や、段差の上り下りに時間がかかる方にとって、車高が低く車内が広いUDタクシーは、乗り降りの負担を減らしてくれます。
2)お腹が大きく、車内でゆったり座りたい妊産婦の方。一般的な車両よりも座席が広く、姿勢を変えやすいことは、長時間の移動における身体的な負担の軽減につながります。
3)ベビーカーごと乗車したい子供連れの方。ベビーカーを畳んでトランクに積み込む手間や、子供を抱きかかえながらの乗り降りの負担を減らせます。
4)大きなスーツケースを持った旅行者の方。空港や駅からホテルまでの移動など、荷物が多い場面でも、広い車内スペースがゆとりを生みます。
このように、UDタクシーは「一部の方だけのための特別な車両」ではなく、「多様な事情を抱えた、すべての人にとって使いやすい車両」として設計されています。特別な予約をしなくても普段のタクシー利用の延長で乗車できるという点も、福祉タクシーとの大きな違いです。横浜・川崎エリアでも、通院や旅行など、こうした場面に出会う機会は少なくないはずです。
国が掲げていた普及目標

国土交通省は、バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、令和3年度から令和7年度末までの5年間を対象とした整備目標を定めていました。この中でタクシーについては、次の2つの目標が掲げられていました。
1)福祉タクシー車両(UDタクシーを含む)を全国で約90,000台導入すること
2)各都道府県における総車両数の約25%をUDタクシーとすること
この目標期間はすでに満了していますが、今回参照した資料は2025年3月時点のものであり、令和5年度末(2024年3月末)までの実績しか確認できていません。令和7年度末という目標期限を迎えた時点での最終的な達成状況については、今回確認できた資料からは分かりませんでした。そのため本記事では、あくまで目標期間の途中経過として、当時把握されていた数値をご紹介します。
こうした目標が設定された背景には、高齢化が進む日本社会において、誰もが安心して移動できる交通インフラを整えていく必要があるという国全体の課題意識があります。
2025年3月時点でどこまで進んでいたのか

2025年3月に開催された第13回移動等円滑化評価会議の資料によると、福祉タクシー車両の令和5年度末時点の実績は52,553台でした。目標の90,000台に対して、着実に増加はしているものの、当時の時点では道半ばの水準でした。
都道府県ごとの達成状況にもばらつきがあり、総車両数の25%以上をUDタクシーが占める都道府県は、全体のおよそ9%にとどまっていました。同資料に掲載されている都道府県別のデータの一部をご紹介します。
・鳥取県:33.5%
・北海道:17.9%
・大阪府:15.3%
・兵庫県:13.3%
・京都府:13.0%
・福島県:11.9%
・青森県:9.1%
・和歌山県:8.8%
・山形県:8.7%
・宮城県:8.4%
・奈良県:7.8%
・滋賀県:7.6%
・秋田県:4.1%
・岩手県:3.7%
こうして並べてみると、同じ日本国内でも地域によって普及率に大きな開きがあることが分かります。都市部だから進んでいる、地方だから遅れている、と単純に言い切れるものではなく、地域ごとの事情が反映された結果だといえそうです。なお、平和交通の拠点がある神奈川県・東京都の具体的な数値は、今回確認できた資料の一覧には含まれていませんでした。この点は「不明」として、今後より詳しい情報が確認できた際にあらためてご紹介したいと思います。
なぜ目標達成が難しいのか

同資料では、目標達成が難しい要因として、タクシー事業者の収支状況の回復の遅れにより、車両の入れ替えが進みにくいことが挙げられています。UDタクシーへの切り替えには車両の購入・入れ替えコストがかかるため、各社の経営状況が普及ペースに影響しているということです。都道府県ごとの達成率にばらつきがある背景にも、地域ごとの車両更新のペースや需要の見込み方の違いなどが関係していると考えられます。
つまり、UDタクシーが街に増えていくかどうかは、乗務員一人ひとりというより、会社全体の取り組みに左右される部分が大きいということです。だからこそ、これから乗務員として働く方には、車両そのものの普及を待つだけでなく、目の前のお客様一人ひとりに、今ある設備の中でできる限りの気配りを届けるという姿勢が、UDタクシーの理念そのものを実践することにつながると考えています。
「予約なしで使える」ことの意味

従来の福祉タクシーは、事前に電話などで予約をしてから利用するスタイルが一般的でした。もちろんそれ自体は必要な仕組みですが、急に外出する必要が生じたときや、旅行先で突発的にタクシーを使いたいときには、事前予約という手順そのものがハードルになってしまう場合もあります。
UDタクシーは、こうした従来型の福祉タクシーとは異なり、まちなかを走る一般のタクシーと同じように、流し営業や通常の配車依頼の中で利用できるように設計されています。つまり、目の前を通りかかったタクシーに手を挙げて乗る、アプリで呼んで数分後に乗る、といった一般的な利用方法の延長線上で、車椅子の方や大きな荷物を持った方も乗車できるということです。この「特別扱いではなく、当たり前の選択肢の一つになる」という点こそが、UDタクシーが目指している姿だといえます。横浜・川崎の街なかを走るタクシーにとっても、目指す方向性は同じだと考えています。
UDタクシーが増えることで変わること

UDタクシーが街に増えていくことは、単に「車椅子の方が乗りやすくなる」というだけの変化ではありません。
・通院や買い物など、日常の外出をあきらめずに済む高齢者が増える
・旅行や出張の際、大きな荷物を持った方がスムーズに移動できるようになる
・子育て中の家庭が、ベビーカーを畳まずに乗車できるようになる
・「タクシーに乗れるかどうか分からない」という不安を感じる人が減る
このように、UDタクシーの普及は、特定の誰かのためだけでなく、まちに暮らすすべての人にとっての移動のしやすさにつながっていくものだと考えられます。横浜・川崎エリアのように、日々多くの人が行き交う地域だからこそ、こうした変化の効果を実感しやすいのではないでしょうか。
気配りが「強み」になる仕事

ここまでUDタクシーという車両の話をしてきましたが、実際にお客様と向き合うのは車両ではなく、乗務員です。車椅子の乗り降りを手伝う、急いでいないか確認しながらゆっくり声をかける、大きな荷物を積み下ろしする——こうした一つひとつの気配りは、車両の仕様だけでは生まれません。
「人に親切にするのが好き」「祖父母の介助をした経験がある」「困っている人を見ると放っておけない」。そうした経験や性格は、UDタクシーのような車両が増えていくこれからの時代において、そのまま仕事の強みになります。特別な資格がなくても、日常の中で培ってきた気配りや優しさを、そのまま活かせる仕事だといえるでしょう。
まとめ
UDタクシーは、車椅子利用者や高齢者、妊産婦、子供連れの方など、さまざまな人が安心して利用できるタクシーとして、国を挙げて普及が進められてきました。令和5年度末時点の導入実績は52,553台で、目標の90,000台にはまだ届いていませんでしたが、着実に台数を積み上げてきていたことは事実です。都道府県ごとの達成率には差があるものの、鳥取県の33.5%のように高い水準を実現していた地域もあり、条件が整えば普及が進むことを示す事例だともいえます。目標期限であった令和7年度末を迎えた現在、最終的にどこまで到達したのかは今回確認できた資料からは分からないため、機会があらためて最新の状況もお伝えできればと思います。
タクシーという乗り物は、決まった時刻表もルートもなく、必要なときに必要な場所へ向かえるという柔軟さが最大の強みです。その強みを、より多くの人が享受できるようにしていくことこそが、UDタクシー普及の本質的な意義だと考えられます。一台、また一台と車両の入れ替えが進んでいくことで、タクシーは「誰にとっても使いやすい移動手段」へと近づいていくはずです。
平和交通は、横浜8拠点・川崎3拠点・羽田1拠点で日々多くのお客様をお乗せしています。年齢や体の状態にかかわらず、安心して利用していただけるサービスであり続けたいと考えています。タクシードライバーという仕事に関心をお持ちの方は、ぜひ平和交通までご相談ください。
出典
・国土交通省「基本方針に定める移動等円滑化の目標達成状況」(第13回移動等円滑化評価会議 資料、開催日:2025-03-05), https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001872667.pdf












